OJTあるある事例

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事例2~単純作業しかアサインできない~

あなたが伊藤トレーナーならどうする?!

OJTトレーナーの伊藤さんは、1ヶ月前にスタートしたとても難しいプロジェクトで大きな役割を担うことになった。


育成対象者である新入社員の小島さんに対しては、自分のプロジェクト業務の一部を依頼する形でOJTを行っているが、そのプロジェクトの難しさゆえに、まだ経験の少ない小島さんに任せられる業務はどうしても“作業的な業務”に限られてしまう。


小島さんは非常に真面目な性格であるため、作業内容を具体的に説明するだけで、後は素直に黙々と与えられた仕事を進めてくれている。また、目立ったミスを犯すこともほとんどなく、わざわざ細かく業務を振り返らなくてもよいため、伊藤さんとしても自分の業務に集中できるので非常に助かっている。


しかし、伊藤さんには1つだけ気になっていることがあった。具体的に説明を受けていない作業については、少し考えれば分かりそうなことでも必ず「どう進めたらいいんでしょうか?」と尋ねてくるのだった。伊藤さんは前向きにサポートしてくれる小島さんを評価しつつも、今後の成長に一抹の不安を感じていた。


私ならこうする!


単なる作業者にならないよう、「やり方ではなく、考え方」を育む

仕事の依頼をするとき、いわゆる作業指示、つまり「やり方」を伝えがちです。「時間がない」「それくらい自分で考えてほしい」など、理由は様々でしょう。


ポイントは、「やり方」を学ばせるだけではなく、「考え方」を学ばせるという意識をもつことです。「手段」と「目的」とも言いかえられます。新入社員は、とかく手段に目が向きがちで、また初めての作業などでは「手段を習熟していくこと」に楽しみを感じることも多いです。常に「目的」を考えるような姿勢を育むようにしましょう。




業務軸の「意味づけ」で、視野をひろげる

育成計画書に沿って“良い仕事”だけを新人にアサインするというのは無理な話です。新入社員の間、ずっと単純作業が割りふられるというのもよくある話。したがって、その中でいかに育成をしていくのかが腕の見せ所になります。


今回のケースで育成できるテーマは「視野」や「視座」。実際に割りふる仕事が単純作業だとしても、業務軸での「意味づけ」でその意味あいは変わります。「その作業は、どのような仕事の一部なのか?」「この作業は誰にどのような影響を与えるのか?」仕事の位置づけを丁寧に伝えることで、他の仕事に応用できる考え方を育むことができます。


成長軸での「意味づけ」ももちろん大切ですが、今回のように単純作業ばかりを任せざるを得ない場合、成長軸の「意味づけ」だけでは「新人は雑務で育つもんだ!」と言っているのと大差がなくなってしまいます。


前後の行程で関わる人への影響範囲を伝えて「視野」を広げ、その関係者がどう感じて、どう考えているかを問うことで「視座」を変えるなど、作業のやり方ではなく、仕事の考え方を意識するように働きかけましょう。


参考トピック:「何のために」を伝える



「着眼点」を伝え、仕事の進め方を考えさせる

「少し考えれば分かりそうなこと」を自分で考える前に質問してくる小島さんは、その時どのようなことを考えているのでしょうか。


小島さんは、はじめての仕事に対しては自信がないようです。しかし、仕事とは「初めて」の連続です。「経験したことのない業務を任されたときに、どのように考え始めたらよいのか?」という勘所がわかるだけでも、十分な成長と言えます。小さくても変化が見られたら、その成長を認めてあげましょう。


「はじめての仕事の進め方」に目を向けさせるために、最初は「関係者は誰か?」「どんな影響があるか?」「どこが落とし穴か?」などと少しずつ「着眼点」を伝えていくとよいでしょう。次第に、「今回の業務をすすめる上で、必要な情報は何だと思う?思いつくだけ書いてみて」など、小島さんにも考える習慣をつけるように関わり方を変えていきましょう。


単純作業に対し、ただ言われたことをこなすのではなく、当事者意識を持ってすすめる姿勢は、他の先輩・上司の目にも頼もしく映り、小島さんがこの先得られる機会にも好影響を与えるに違いありません。


参考トピック:着眼点の重要性



「点と点が繋がり線になる」アサインを計画する

最初は単純作業しか任せられなくても、小島さんが自分で考え仕事を進められるようになればなるほど、任せられる仕事は増えていきます。その際、もしA~Eの工程があったとしたら「AとD」や「BとE」などのぶつ切りの作業ではなく、「A~C」「B~D」など “一連の作業”を任せられるように働きかけましょう。


参考となる考え方に、「バックワード・チェイニング」があります。


例えば、営業活動を分解すると、

  • 顧客とのアポ取り
  • 自社の紹介
  • 自社サービスの紹介
  • 要件のヒアリング
  • 企画・提案
  • 見積の提出
  • 売買契約の締結(いわゆる受注)
  • サービス提供/検証
  • ご請求/入金

という流れがあります。


それぞれの行動の連なりを鎖(チェーン)と見立てた時に、行程9から行程1へと進めるのがバックワード・チェイニングです。「請求書を担当者へ手渡す」行動を最初に経験させ、最後に訪れる「成功イメージ」を持たせたうえで、一つひとつの行程を経験させていくというものです。常に最終イメージをもったまま、個々の行程に向き合えるので全体像をイメージするのに有効です。


行程8~9を経験させて、次に行程⑤~⑨を経験させるなど、段々と“一連の作業”を任せることで、自分が責任を持ってできる仕事の範囲が目に見えてひろがることを実感し、また成長実感も抱きやすいくなりますす。それは、自分自身が作業者としての扱いではなく、組織の一員として貢献できているという自己有用感にもつながるでしょう。


参考トピック:依頼する業務の決め方

気がついたこと、思ったことを記しておきましょう

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